概して,ICMは楽しかったのですが,やはり分野違いのところの話しは全くわからないです.
これは数学だからなのかもしれません.
直観的な理解っていうのができないので,まず定義を知らないことばが出てきてそれがその後重要な役割を担っていったりすると,もうだめなのです.
しかも,図とか全然なかったりして,これで周りの人は分かっているのだろうか,と疑ってしまうような部分もあったりします.
ということで,3日目ぐらいからは,「組合せ論」,「計算の数学的側面」におよそ絞って話しを聴く事にしていきました.
ここら辺の話しは自分の興味ともとても重なり,見聞を広めるのにとてもよかったです.
あと,少し「科学計算と数値解析」や「科学への数学の応用」っていうところの話しも聴いたりしました.
次回のICMは2006年の8月20日からで,マドリッドで行なわれるようです.
是非次回も参加したいものです.
そのときまでには,トポロジーや代数,論理などがもう少し分かるようになっているようにしておきたいと思います.
初日(20日)は人民大会堂でOpening CeremonyとReceptionが行なわれましたが,なかなか豪華でした.
江沢民も出席して,フィールズ賞の授賞をしていました.
フィールズ賞の方はどんな人がどんな業績でもらったのかよくわからないのですが,
ネヴァリンナ賞の方は,SudanがPCP定理とリスト復号化の業績で授賞しました.
僕の予想でもPCP定理関連の人が受賞するだろうと思っていたので,予想が当たったことになります.
そんなことでも割と嬉しかったりします.
で,今日は自分の発表がありました.
15分の発表だったのですが,やはり準備不足というか,最近どうも発表練習にやる気がなくて,よくないと思います.
反省しなければなりません.
自分がよく分かるセッションは「組合せ論」と「計算の数学的側面」のところなので,そこら辺には割と貼りついていますが,今日はだいぶ休憩もとりました.
招待講演でAroraがPCP定理の関連の話,Feigeが近似アルゴリズムのタイトな結果に関する話をして,どちらもとても面白かったです.
こういう話を聞くと,また近似アルゴリズムに対する熱が上がってしまう気がして,どうしましょう.
このツアーも青島大学の日本語が喋れる方に同行して頂いて(というか,バスやツアーガイドの手配などもして頂いて),現地ではツアーガイドの通訳もしてくださいました.
本当に感謝します.
ということで,明日からは北京です.
で,午後はバスで遠足.
ラオシャンという山に行きました.
ラオシャンは漢字で書くと,「ラオ」が山偏に労,「シャン」は山です.
で,この山のふもとにある太清宮を見て回りました.
ここは道教のお寺で老子もいました.
割とたくさん歩いて回ったので少し疲れました.
で,今日のパラレルセッションは1つ.
Value and Power indices のセッションに行きました.
ここら辺の話しは割と馴染みがあるので,聞いていても割とすーっと入っていきました.
アルゴリズムが何とかかんとか,っていう話しがあって,質問もしてみたんですけど,どうも意図したことが聞けなかったようです.
ちょっと残念です.
で,午後はまず謎の招待セッションから2件の発表と,パラレルセッションが2つありました.
招待セッションはさっきのNeymanの話しと関連した話題から2件発表がありました.
うーん,この分野面白いぞ.
というか,computational complexityの専門家がちゃんと入ってきていろいろと議論し出したらますます面白くなっていくのでは,ということを思ったりする場面が多々ありました.
で,今日のパラレルセッション2つ.
こちらはつまらなかった.(あらら.)
1つ目は多段階ゲームのところにいっていたのですが,目当ては最後にstable matchingの話があるところでした.
しかし,その話しはよくわからないし,時間は15分ぐらい超過するし,せっかくの機会だったのにそれが活かせなくて残念でした.
あるいは,自分はまだstable matchingがよく分かっていない,ということなのかもしれません.
2つ目のセッションは協力ゲームの解概念,というセッションで,こちらは譲渡可能でない効用を持つ協力ゲーム(Nontransferable utility game, NTU game)の解の話しが主に行なわれていました.
感想としては,NTU gameがどういうものかは分かったけども,それ以上のことはあまり分からなかった,というのがあります.
Nashが質問し出そうとしたときはちょっとびっくりしました.
で,その後にバンケット.
今日は立食です.
いろんな方とお話できて面白かったです.
よく分かったこと,というのは,経済系からゲーム理論をやっている人とOR系からゲーム理論をやっている人では研究の興味が全然違うのだな,ということです.
僕の立場はOR系の方に近いのですけど,ORそのものでもないし,という微妙なところにいるわけですが,経済の方の人とはまず使うterminologyが全然違うんだな,ということが分かりました.
こういう分野間差異というのを実感できることはなかなか楽しいです.
朝食のときに谷野先生と話していて,実は自分の発表が今日であることに気付く.
うーん,明日だと思っていたのに.
ちゃんと準備ができていない.どうしよう.
とか,そんなこといってる場合じゃないので,何とかやり遂げられるように努力しよう.
ということで,会場にいってみるとちゃんと人も集まっているようです.安心ですね.
しかも,会場にいって今日の分のプログラムの変更の紙を受け取ると,自分が自分のセッションのチェアーになってるし.
なんか最近チェアー多いなぁ,と.
どうして学生なのにこんなにチェアーばっかりまわってくるのか.おかしいです.
で,まぁ,それはいいとして,朝はオープニングレセプションと記念写真撮影.
そして,招待講演が2件.
SeltenとShapleyが行ないました.
が,話しは全然わからなかったです.
なんといっても,OHPシートに書いてある字が小さくて小さくて.
「いや,そんなものは見えなくても話している声で理解しろ」と言われるかもしれませんが,それはちょっとできなかったです.
だって,マイク無視で話されてるんですから聞こえないんです.
ということで,招待講演は有名どころを眺めさせていただいた,というただのミーハーになってしまいました.
で,バイキングの昼食のときに,午後のセッションはどこを見に行きましょうか,とか谷野先生,河野先生,鶴見さん(東京理科大)と話していたら,河野先生の講演が今日に突然移動されていたことに気付きました.
昨日配られた冊子では河野先生の講演は明日になっていたのですが,今日配られた変更でいきなり移動になっていたようです.
本人に対して特別なアナウンスが何もなかったようなので,ここで見落としていたら大変なことになっていたでしょう.
で,午後のセッションはパラレルセッションが2つ.
1つ目のパラレルは「ナッシュ均衡とその精緻化」というところにいってきました.
主に進化的な視点からの話しが多かったように思います.
進化的ゲーム理論は学部のときに生態学の講義を取っていた事があるおかげで(さすが教養学士),そのときの記憶が蘇ったりして楽しかったです.
で,2つ目のパラレルセッションは自分がチェアになっている「ネットワークのゲーム」というセッションにいました.
1件目からMaschlerがじかに発表したりと,なかなかの盛況ぶりでした.
自分の発表も何とかやり遂げる事ができました.
途中英語に詰まってしまう事が何度かあって,これは練習不足(というか練習していない)せいだ,と反省すべき点が多々ありました.
ただ,この内容は何度か(英語で,また日本語で)発表していることもあって,それが結果的に功を奏したかたちになってしまったのだと思います.
だから,まだ油断はできません.練習はいまだに大事です.
ただ,聴衆の反応はよかったようです.
いろいろ質問とか頂けましたし,セッションの後にいろいろディスカッションとかできたりしてとても有益でした.
で,夜はWelcome Banquetが行なわれました.
美味しい料理に舌鼓を打ちながら京劇を鑑賞.
なんか,この会議ってすごく豪華なんですけどいいんでしょうか.
だって,講演中はジャスミンティーが飲めるし(セッションが始まる前にサーブされる),コーヒーブレイクのときにはケーキとかフルーツがどっさり出て来るし.
本当にいいんでしょうか.
ということで,まだ会議自体がはじまるのは明日からなのですが,なかなか不安があります.
なにせ,招待講演者が本当に来るのかどうか分からないし,ナッシュにいたっては講演のタイトルすら決まっていないのだから.
いったいどうなるんでしょう.
まぁ,自分の話しは木曜日だから,その準備は明日すればよいということで,それに関しては余裕があります.
水曜日は中村研ゼミを特別にやりました.
一日中のゼミだったので途中でだいぶ疲れてしまいましたが,楽しい一日でした.
で,自分の話し自体は結局証明自体が直せなかったので,別の所で話したものをやりました.
自分がよく分かっていない部分が分かってよかったです.
あと,先週の終わり頃にいろいろなニュースが飛び込んできました.
1つは,Dijkstraが亡くなった,というニュース.
Dijkstraといえば,構造化プログラミングの提唱者でもあり,組合せ最適化の分野では最短路問題の解法である「ダイクストラのアルゴリズム」でも有名です.
ご冥福をお祈り致します.
もう1つの大きなニュースは素数判定問題の決定的多項式時間アルゴリズムがインドの研究者のグループによって作られた,というニュースです.
この問題は本当に長い間未解決であったので,このようなアルゴリズムが作られたということは大きな結果だと誰もが認める所です.
ということで,明日から中国です.
どんな感じになるのか不安ですが,何とかやっていきたいと思っています.
とか思ったら,何とか証明自体は直せそうです.
でも,レジュメが直せない.
月曜日(7/29)と火曜日(7/30)はコマゼミ特別編でした.
月曜日のスピーカーは縫田くん,森田さん,松久さん,ということでした.
縫田くん,森田さんの話しは群の表現論が関わる話題でした.
群の表現論などはもともと全く知らない内容だったのでとても勉強になりました.
松久さんの話しは,あまりスタンダードでないゲーム理論の話でしたが,
様相論理やナッシュ均衡などのいろいろな概念が絡み合っていて,面白い話題でした.
で,月曜日は宇野さん,柏原さん,自分.
宇野さんの話しでは,こんな単純なアイディアでオーダーまで落ちてしまうのか,と感心しました.
柏原さんの話しは僕との共同研究でした.
自分の理解も深まってよかったです.
で,自分の話しはちょっとトポロジーっぽいもの.
自分の理解が不足していたところもありましたが,何とかやり遂げた,という感じです.
ということで,今回の特別編は,有限群の表現論,ゲーム理論,アルゴリズム,集合族,トポロジーといった感じでいろいろな分野の話題が集まったコマゼミ独特のものになったような気がします.
とても楽しかったです.
懇親会もちょっと遅れて参加したのですけど,楽しんできました.
みなさんありがとうございました.
で,水曜日(7/31),木曜日(8/1),金曜日(8/2)は根本さんのゼミの合宿で情報学研究所のセミナーハウスへ.
所在地は軽井沢.
本当に別荘地のまん真中にあって,ちょっと探すのに苦労しました.
で,一番興味深かったのは問題セッションでした.
各人が日頃考えている問題の中のちょっとした未解決問題やその分野での有名な未解決問題などを出し合って,議論しようというものでした.
自分もETHで聞いたいろんな問題を発表してきました.
あと,レギュラーな発表として,2002年のSTOCのpermanentの近似計算に関する論文の紹介もしました.
他の方の発表も勉強になり,いろいろと議論もできました.
またドライブ・ひのき風呂・懇親会・雷雨などとても楽しい合宿でした.
やはり大うけしたのは「International Workshop on Algorithm Theory and Applications」でしょうか.
どちらのゼミも調整などをして下さった方々に大変感謝致します.
自分の勉強不足を痛感するとともに(っていつもこうなのですが),自分も自分なりの貢献ができたとも思える1週間でした.